「こら!」

 大きな声ですぐに教諭がきたのを察知し、全員席に着いた。

「お前ら中学生になってもお化けの話なんって、幼稚すぎるぞ!」

 中川厚教諭は四十代前半の数学担当だった。いつも髪を七三にきっちり分けて、鋭い眼光で生徒たちを威圧していた。

 朝のホームルームも終わり、敏也の前に本賀正充(ほんがまさみつ)が現れた。

「ほら、例の……」

 正充は手のひらより少し大きい紙袋を差し出した。

「ありがとう」

 敏也は周りを伺いながら包みを机の奥にしまった。

「明日、必ず持ってこいよ。忘れたら承知しないぞ」

 正光に睨まれて、敏也はか細い声でうなずいた。

 一時間目の授業が始まって、すぐに敏也は保健室に行った。

 家を出るときは平気なのに、学校に来ると気分が悪くなる。

 なぜか保健室の空間だけは落ち着けた。

 しかし、今日は頭痛と吐き気を同時に感じ、とても耐えらなかった。気がついたときには早退していた。