「それでどうしました」

「追いかけようとしましたが……」

「どうしたんです」

「やつが現れました」

「やつとは?」

「この学校に憑いている霊だ。怖くなって、一階に戻った直後に、大きな物音を聞いたんだ。外に行って見ると、彼が倒れていました。周りは血の海でした」

 用務員は身体を小刻みに震えている。

「そうですか。他に誰かいませんでしたか?」

「絶対にいない」

「間違いないんだな!」

 多川刑事は林田刑事と違って短気のようだ。

「最初の物音を聞く前に最後に残っていた中川先生は帰って行ったので、誰もいません!」

 用務員は強く否定した。

「それでは、また後日、警察の方に来てもらうかもしれませんので、そのときはまた、お願いします」

 動揺している用務員に、これ以上話を聞ける状態ではなかった。