口から出まかせだったけどそのまま御手洗の方に行こうとすると、呼び止められた。


「学校で何かあったか?」

「…は」

「目、真っ赤だぞ」


お兄ちゃんは私の目の前にくると、私のまぶたに触れてきた。


「ひゃっ」

「泣きたい時は素直に泣くといい」


誰のせいで、こうなってると思ってるのかしら。

何も知らないばか兄貴はまぶたに触れていた手を私の頭に乗せて撫で始める。


「思春期とは、難しいな…」

「…離して」


優しくしないで。

そんなことされたら、せっかく我慢してたのに。


「…うっ…ぅぅ…」


よりにもよって1番見られたくない人の前で、泣いちゃうよ。


パシン!


「…!」

「触んないで!!クソ兄貴の、バカ!!!!」


お兄ちゃんの手を思いっきりはたき自分の部屋に飛び込んだ。




「楓ー?もう塾の時間よ」

「…んん」

あのまま、寝てしまったんだろう。

頬や枕は涙でカピカピになっていた。

まずい、顔を洗わないと。


一通り準備を終え部屋を出る。


「ちょっと楓」

「な、なにお母さん」


リビングの前を通ると、お母さんに呼び止められた。