『ねえねえお兄ちゃんそれなーに?』

『これか?これは人類が生み出した至高、ボーイズラブだ。楓も読むか?』

『…??なんで男の人同士がキスしてるの??』

『それがいいんじゃないか。いつか楓にもわかる時が来るぞ』



『ふぇぇえぇえ宿題わかんないよぉ…!』

『大丈夫だ、お兄ちゃんが手伝ってやろう』




お兄ちゃん、大好き。





『楓ちゃんって、お兄ちゃんのこと好きなの…?』

『そんなのおかしいよ』

『兄妹は結婚できないんだよ?』

『気持ち悪い』



5年生の頃初めて気づいたこの気持ち。

あの頃はまだ兄妹はダメなんて知らなくて、よくある友達同士の恋バナで話したら言われた言葉たちを思い出す。


ガチャ、と玄関が開く音がする。お兄ちゃんだ。

ぐっと、唇を噛んで溢れそうになる涙を抑える。

ベッドから立ち上がり玄関に顔を出すとやっぱり本屋の紙袋を持ったお兄ちゃんがいた。


「チッ、帰ってきやがったのかよクソ兄貴」

「…そんなこと言いながら出迎えてくれるあたり、楓は変わらないな」

「は、はぁ?!御手洗行こうとしただけだし自惚れないでよクソ兄貴のくせに!!」

「楓」