俺には、たった一つの願い事がある。
ずっとずっと、願い続けたこと。

──「神様、お願いします」

それは例えば七夕に。
それは例えば神社のお参りのときに。
それは例えばサンタさん…はあの頃はもうあまり信じてなかったけど。

神様や、おまじないや、その他常識外れなものに願わないといけないほどの大きくて、それでいて絶対叶うことの無い願い事。






「颯真との、血の繋がりがなくなりますように」



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「おはよ、楓真(ふうま)」


今日も、隣の部屋から双子の兄─颯真(そうま)が顔をのぞかせ朝っぱらからその無駄に整った顔を覗かせる。


「……」


でも俺はそれに応えてやらない。

俺のこの気持ちを隠すため。

この気持ちを隠すためなら、兄を嫌う生意気な弟にくらいなってやる。

血の繋がった実の双子のお尊に想いを寄せられているなんて知ったら、気持ち悪がるだろうな。
だから、絶対知られる訳には行かない。


「こら楓真! 颯真にもう少し優しくしなさいよ」

「いいんだ母さん。楓真も難しい年頃なんだろう」

「いや双子なんだからあなたも同じでしょう……昔はあなた達、仲良かったのにね」