何が何だかと困惑するお兄ちゃんを置いて家の方へ走り出した。


家に帰ると、真っ先にお風呂場に向かった。

ハサミを持って。

ハサミを開き、長い黒髪を挟む。


チョキ、チョキ


どんどん、切っていく。


お兄ちゃんと似てると、兄妹だと言われるのが嫌で伸ばしていた髪の毛。

でももうそれともおさらばだ。


髪の毛に痛覚はないはずなのに、痛い。痛いよ。


「…ぅっ…」


痛いよ…お兄ちゃん…。




「…」


お風呂の鏡には、肩くらいの髪の毛のお兄ちゃんの妹がいた。

顔は涙でぐしょぐしょで、切り方も素人のそれで毛先がちぐはぐだ。


「明日、美容院行かないと…」


思ったより、冷静に言葉を発せた。

こんな調子で、いつかこの痛みも忘れられるのかな。

いつかあの二人を心から祝福できるようになるのかな。

ねえ、お兄ちゃん。