一生のお願い

「中学生がこんな時間まで出歩くんじゃありません!!」

「まあまあ母さん。楓だって今日は文化祭だったんだし」

「いいえ!文化祭は夜遊びするためにあるわけじゃないのよ?!」

「おに…兄貴だってまだ帰ってないじゃない」

「…」

「お母さん?」


この異様な空気…私の帰りが遅いからだけではない…?

そうだ、そもそも母はこんなことでここまで怒ったりしない。


「お、お父さん…?」

「…ああ、なんでもない。楓は気にすることないよ」

「ああもう…颯どうして…!」


お母さんはそう嘆き席に着くとコップのお酒を一気に飲み干す。

すると呻きながら、体を俯かせフルフルと小さく震え始めた。


「お母さんどうしたの?」

「楓…あなたは、普通なのよね…?」


私の手を取り、焦点の定まらない瞳で私を見てくる。

いつもの笑顔の母はそこにはいなかった。


「お母さん、落ち着いて」

「ねえ、楓は…女の子を好きになったり…してないわよね…?」


まだ帰ってない私の隣の部屋の住民。

お兄ちゃんの話題が出てすぐこの反応。


「お母さん…」


嫌よ、聞きたくない。

心の中のザワザワしたものがだんだんはっきりしてくる。