目をうっとりさせながらそう語るのは、我が文芸研究部の1年生五反野 綾芽(ごたんの あやめ)ちゃん。

まだあどけなさの残る元気で可愛らしい子。
でも中身はしっかり腐った腐女子だ。

ここ文芸研究部は、外ズラは小説やマンガを愛する大人しい子が集まってるように見えるが中身は腐女子のたまり場だ。

そしてそこに所属する私も例外なく。

もう、これ以上この本を読んでいられなくて本を閉じる。


「もう、いいんですか?」

「ええ、そろそろ帰らないと」

「わ、私も!」


カバンを取り部室を後にすると、同じく身支度を終えた五反野さんがちょこちょこと走ってきてついてきた。

中学2年生にして既に166センチまで伸びきってしまった私から見て、彼女はとっても小さく見える。確かまだ143ほどしかないとか。


「先輩は、私の憧れなんです」

「え?」

丸ノ内女学院の最寄り駅である東京駅から共に山手線に乗ると、ふと五反野さんがそう呟く。


「いつも凛としていて、それでいて成績は学年トップ。スラッとモデルさんのようなスタイルに長く綺麗な黒髪から覗く切れ目ながらもビー玉のような黒目…!恋愛において百戦錬磨とも噂されてるんですよ」