一生のお願い

「腐男子の生命力舐めてもらっちゃ困るぞ。なにか探してるのか?」


五反野さんが読んでいたタイトルを伝えるとお兄ちゃんは本棚から取り出し渡してくれた。


「友達に読ませてもいいかしら。続きが買えてないんですって」

「友達が来ているのか。構わないぞ」

「…」

「楓?」


本を手に入れたのに未だに動こうとしない私を不思議そうにみるお兄ちゃん。


「…こういうの、平気になったのね」


本棚のホラー小説を指さす。


「…?ああ、これは俺のじゃない」


…ズキン


「これは晴人のだ。楓も知っているだろう。俺が晴人の部屋にBL本を持ち込む仕返しだとかでこうして俺の苦手なジャンルを置いていくんだ」

「…あー、晴人くんの」


なんだ、そうだったのか。

さっきまでのモヤモヤが晴れていく。


「ふん、全くその歳になって彼女の一人もいないだなんてお兄ちゃんはやっぱりクソ兄貴ね」

「彼女…?なぜそんな話になるんだ。彼女は確かにいないが…」

「じゃ」


彼女いない歴=年齢のお兄ちゃんをおいて私はお兄ちゃんの部屋を出た。

お兄ちゃんと恋バナなんて、絶対したくないもん。



「彼氏は、いるんだが…」