そろそろもう出たいというのは私の本音でもあったりする。

この時間に出れば、またお兄ちゃんと帰りが一緒になるかもしれないから。

身支度を済ませ五反野さんと共に部室をあとにする。


「見た?松戸先輩、「こら」ですって…!」

「うん、うん!!私もデコピンされたーい!」

「きゃーー!」


そんな会話が後ろから聞こえた。


「ふふ、やはり先輩はみんなの憧れなんですね」

「そうかしら、デコピンされたいだなんて皆変わってるわね」


東京駅の改札をぬけ山手線に乗る。


「私、この学院受験して良かったです」

「え、どうして?」

「生のBLが見れないので女子校なんて嫌だったんですが…楓先輩という素敵な方にお会いできたので…なんて、えへへ」


五反野さんは手で口元を押え、少し照れくさそうに笑う。

可愛い…。

私の手は自然と彼女の頭を撫で始める。

私もこれだけ可愛ければ…。

私が五反野さんだったら、お兄ちゃんの御相手になれたかな。


「えへへ〜」


撫でられて嬉しいのか、五反野さんの顔は緩んでいく。


「…あれ?楓ちゃん?」


近くから、聞き覚えのある声がした。