また季節が移り変わろうとしている朝、酷い頭痛が僕を襲う。

…はやく、家を出ないと

大きく息を吸って立ち上がりあの海岸に向かう。
いつも通りの時間に僕は着いて君も現れる。

今日も昨日とは違う朝焼けが変わらずに綺麗で。
ずっと感じていた頭痛がさらに酷くなり顔を伏せる。

「ねえ、もう気づいてるんじゃないの?」

初めてカノジョのほうから僕に言葉をかける。

…違う。

「分かってるんでしょ?」

…違う。

「私の隠しごと…隠せてたかな?」

「前を見て。」

嫌だ、嫌だ、嫌だ…

伏せていた顔を上げて隣を見る。

初めて会った日以来、2度目に見る君の顔。
いや、違う。何度だって見たことがある君の顔。

困ったように、悲しそうに眉を下げて、それでも笑いかけるカノジョ。
この表情も僕は誰よりも知ってる。誰よりも見てきた。

「ほら、ちゃんと前を向いて…歩いて。今日の朝焼けは今日しかないの。昨日の朝焼けはもうない。昨日の私だって、1年前の私だってもう…いないんだよ。」

綺麗な目から頬を流れる涙は朝焼けに照らされてキラキラと輝いていた。
流れ落ちる涙を拭おうと手を伸ばした途端、カノジョは朝焼けに紛れて消えていった。

1年前、事故で亡くなった僕の彼女はまた消えていってしまった。
誰よりも、何よりも綺麗な朝焼けになっていった。