このままでは仕事がやりづらくてたまらない。ここはひとつガツンと言うべきか。

そんなことをぼんやり思っていると、目の前でまた痴話喧嘩が始まった。

「もう、社長が余計なこと言うからです」

「何が余計なことだ。俺の一花に手を出すやつが悪い」

「手出されてないですし、人を物みたいに言わないでくださいっ!」

ギャアギャアと不毛な言い合いを繰り広げる二人に、向井の中で何かが切れた気がした。

「君たち、仲がいいのはよくわかったよ。いい加減仕事しようか?」

微笑みながらも目が笑っていない向井に、二人はピタリとケンカを止める。
向井のただならぬ雰囲気に、一花は柳田を見た。柳田は少し焦った顔をしていて、そんな柳田を見るのは初めてで、何事かと構えてしまう。