俺様社長の強引愛はただの純粋な愛でした◆おまけのお話を追加しました◆

今ここで柳田の手を取ったら……。
想いに応えたら……。
止まったままの時間が動き出すのだろうか……。

一花は小さく息を吸い込んだ。
そして口を開いた瞬間、

「あら、直己くん?」

柳田を呼ぶ声に慌てて涙を拭う。
柳田が一礼するのを見て、一花もペコリと頭を下げた。

「……もしかして一花ちゃん?」

「は、はい。あの、お久しぶりです」

喪服に花束と手桶を持った婦人は康樹の母親で、一花に驚きつつも優しく微笑んだ。

「本当、お久しぶりね。もしかして康樹のお参りにきてくれたの?」

「はい」

康樹の母親は綺麗に活けられた花を見て、自分が持ってきた花も一緒に活けて整えた。

「お花もありがとう。毎年命日にお花をくれていたのはもしかしてあなたたち?」

「あの、私……です」

「そうなの、いつも気にしてくれてありがとうね」

康樹の母親は線香を上げ手を合わせた。
一花と柳田も、合わせてもう一度手を合わせる。
しばらく静かな時間が流れた。