砂利を踏みしめる音が聞こえて一花は我に返った。
いつも長居はしない。
花を活けて線香をあげたらすぐに帰る。
だから今もそのつもりで立ち上がった。
「もしかしてと思ったが、ここにいたか」
その聞き覚えのある声に、慌てて振り向く。
「社長……。何でここに?」
「康樹の命日だろ?」
「……」
一花の返事を待たずして、柳田は康樹の墓前に手を合わせた。
線香の煙が高く昇っていくのを一花はぼんやりと見つめる。
「……なぜ知っているんですか?」
立ち上がった柳田に一花は問う。
康樹のことは誰にも言っていない。彼氏だったことも、この墓園も、命日も。だが柳田はなぜか知っていた。病院でははぐらかされたため、その後一花の心にしこりを残し燻り続けている。
「……俺は康樹の家庭教師をしていた」
「家庭教師……?」
いつも長居はしない。
花を活けて線香をあげたらすぐに帰る。
だから今もそのつもりで立ち上がった。
「もしかしてと思ったが、ここにいたか」
その聞き覚えのある声に、慌てて振り向く。
「社長……。何でここに?」
「康樹の命日だろ?」
「……」
一花の返事を待たずして、柳田は康樹の墓前に手を合わせた。
線香の煙が高く昇っていくのを一花はぼんやりと見つめる。
「……なぜ知っているんですか?」
立ち上がった柳田に一花は問う。
康樹のことは誰にも言っていない。彼氏だったことも、この墓園も、命日も。だが柳田はなぜか知っていた。病院でははぐらかされたため、その後一花の心にしこりを残し燻り続けている。
「……俺は康樹の家庭教師をしていた」
「家庭教師……?」



