柳田と向井の前に堂々と立ち、一花は丁寧に挨拶をした。
「本日より秘書課に配属になりました、野原一花と申します。至らぬ点などあるかとはございますが、早く仕事を覚え精進して参りますので、どうぞご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します」
秘書課とは名ばかりで、他の社員は見当たらない。以前は二人社員がいたが辞めてしまい、今は一花だけが配属されている状態だ。簡単に秘書課について説明をもらった一花は、自分の仕事は柳田と向井のサポート業務だということを理解した。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね、野原さん。さっそくですが、仕事をお願いします」
向井は優しく微笑みながらもすぐさま鬼のように仕事を与え、柳田は値踏みをするように一花をジロジロと見る。
そして口を開いた。
「野原……といえばお前、しんのすけだよな。おい、しんのすけ」
「…………は????」
呼ばれたのかどうなのかよくわからず、一花はすっとんきょうな声を出してしまった。
「……社長、野原さんが困惑していますよ」
向井に冷ややかにたしなめられるものの、柳田はいたく気に入った様子で訂正する気もないらしい。
「あの、しんのすけって、もしかしてクレヨンしんちゃんですか……?」
「しっくりくるだろ?」
こねえよ!
と喉元まで出かかったのを、ぐっと抑えた。というより、どう反論していいのかわからなかった。
異動初日早々これである。
一花はこの先の仕事に不安を覚えたのだった。
「本日より秘書課に配属になりました、野原一花と申します。至らぬ点などあるかとはございますが、早く仕事を覚え精進して参りますので、どうぞご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します」
秘書課とは名ばかりで、他の社員は見当たらない。以前は二人社員がいたが辞めてしまい、今は一花だけが配属されている状態だ。簡単に秘書課について説明をもらった一花は、自分の仕事は柳田と向井のサポート業務だということを理解した。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね、野原さん。さっそくですが、仕事をお願いします」
向井は優しく微笑みながらもすぐさま鬼のように仕事を与え、柳田は値踏みをするように一花をジロジロと見る。
そして口を開いた。
「野原……といえばお前、しんのすけだよな。おい、しんのすけ」
「…………は????」
呼ばれたのかどうなのかよくわからず、一花はすっとんきょうな声を出してしまった。
「……社長、野原さんが困惑していますよ」
向井に冷ややかにたしなめられるものの、柳田はいたく気に入った様子で訂正する気もないらしい。
「あの、しんのすけって、もしかしてクレヨンしんちゃんですか……?」
「しっくりくるだろ?」
こねえよ!
と喉元まで出かかったのを、ぐっと抑えた。というより、どう反論していいのかわからなかった。
異動初日早々これである。
一花はこの先の仕事に不安を覚えたのだった。



