「連日不審なメールが届いているんだって?大丈夫なのか?全部向井に転送しろ。他に何か変わったことはないか?」

「はい、特には」

「一先ず被害届は出しておいた」

「大袈裟じゃないです?」

「何言ってるんだ。お前に何かあってからでは遅いだろう?」

ちょうど信号が赤になり、柳田は一花の方を向く。その顔は真剣そのもので、一花は言葉を飲んだ。そんな真剣な顔をされるとどうして良いかわからない。

「……でも一体誰があんなことをするんでしょうね?」

「俺だったら心当たりがありすぎるけど、一花は恨まれるようなことないしな。もしかしたら俺の関係かもしれないな」

「恨まれるって……何したんです?」

じとりと見る一花の視線も何のその、柳田は事も無げに言った。

「ん?上にのしあがるためには恨まれるもんだ。だから、お前が気に止むことはないからな」

そう言って一花の頭を優しくポンポンと撫でる。何だかそれがくすぐったくて、一花は気にしないように窓の外を眺めた。