「神戸牛でも食べて帰るか」
「いや、遅くなってしまうので帰りましょう?」
「真面目すぎだろ、お前」
「社長が不真面目なんですよ」
相変わらずの言い合いを繰り広げていると、ふいに「柳田社長」と呼ばれ、二人は振り向いた。と同時に、柳田が舌打ちしたのを一花は聞き逃さなかった。
声をかけたのは以前柳田を取材したフリーアナウンサーの千代田穂香だ。前回見たとき同様、華やかに着飾っていて誰よりも目を引く出で立ちだ。
「素晴らしい講演でした」
「それはどうも」
そっけなく返事をする柳田に、なぜか一花はドキドキと緊張してしまう。
穂香は柳田に近づいたかと思うと、長くしなやかな指でネクタイを触った。
「曲がっていますわ」
ネクタイの歪みを直すとにっこりと笑う。
先程の一花の直しに不満でもあるかのような仕草に、一花の胸はチクリと痛んだ。
それにつけて一花が直したネクタイよりも綺麗に整えられていて、更に胸の痛みは増す。
「いや、遅くなってしまうので帰りましょう?」
「真面目すぎだろ、お前」
「社長が不真面目なんですよ」
相変わらずの言い合いを繰り広げていると、ふいに「柳田社長」と呼ばれ、二人は振り向いた。と同時に、柳田が舌打ちしたのを一花は聞き逃さなかった。
声をかけたのは以前柳田を取材したフリーアナウンサーの千代田穂香だ。前回見たとき同様、華やかに着飾っていて誰よりも目を引く出で立ちだ。
「素晴らしい講演でした」
「それはどうも」
そっけなく返事をする柳田に、なぜか一花はドキドキと緊張してしまう。
穂香は柳田に近づいたかと思うと、長くしなやかな指でネクタイを触った。
「曲がっていますわ」
ネクタイの歪みを直すとにっこりと笑う。
先程の一花の直しに不満でもあるかのような仕草に、一花の胸はチクリと痛んだ。
それにつけて一花が直したネクタイよりも綺麗に整えられていて、更に胸の痛みは増す。



