穂香は一花を一睨みすると柳田に背を向け、素直に応接室を後にした。
出口まで案内しているだけなのに、カツカツとヒールの音が一花を追ってきているようで居心地が悪い。
柳田の前ではあんなに笑顔だった穂香だが、一花の前ではまったくの無表情で、逆にそれが一花の体を強張らせる。
「すぐに誘いに乗ってくれると思ったけど、意外と堅物なのかしら?」
背後から不満声が聞こえたが、それが一人言なのか一花に向けられたものなのか判断できず、一花は黙って歩を進めた。
オフィスの出口で振り向き、本日はありがとうございましたと当たり障りのない挨拶をしようと口を開きかけたが、それは穂香によって遮られる。
「あなたは社長の何なのかしら?」
「……秘書をしております」
「秘書ねぇ。柳田社長にはもっと派手な秘書が付いているかと思ったけど、案外地味で安心したわ」
穂香は一花を値踏みするかのようにジロジロ見てから、カメラマンを引き連れて帰っていった。
「……恐れ入ります」
後ろ姿を見送りながら、一花は社交辞令的に呟いた。
出口まで案内しているだけなのに、カツカツとヒールの音が一花を追ってきているようで居心地が悪い。
柳田の前ではあんなに笑顔だった穂香だが、一花の前ではまったくの無表情で、逆にそれが一花の体を強張らせる。
「すぐに誘いに乗ってくれると思ったけど、意外と堅物なのかしら?」
背後から不満声が聞こえたが、それが一人言なのか一花に向けられたものなのか判断できず、一花は黙って歩を進めた。
オフィスの出口で振り向き、本日はありがとうございましたと当たり障りのない挨拶をしようと口を開きかけたが、それは穂香によって遮られる。
「あなたは社長の何なのかしら?」
「……秘書をしております」
「秘書ねぇ。柳田社長にはもっと派手な秘書が付いているかと思ったけど、案外地味で安心したわ」
穂香は一花を値踏みするかのようにジロジロ見てから、カメラマンを引き連れて帰っていった。
「……恐れ入ります」
後ろ姿を見送りながら、一花は社交辞令的に呟いた。



