「俺はそうやってずっと壁を作ってきた。それが教師の俺にとって必要な事だから。
だけど、その壁を、とんでもない破壊力でぶっ壊すヤツが現れた。
そいつはいつも一生懸命で、真っ直ぐで、意外と不器用で、優しくて、危なっかしいヤツで……。
すぐ泣くし、言う事聞かないし、人の事ばっかりで自分のことは全然分かってないし、平気で俺の心の中に入って来てかき混ぜて行く。
──好きになるのにそんなに時間はかからなかったよ。
お前って、ほんと恐ろしいな」
フッと笑った先生の瞳が、ゆらゆらと揺らめく。
「せ、んせ……」
先生は握っていた私の手をそっと持ち上げ、優しく手の甲に口づけをした。



