私は、時間が取れる日はなるべく病院へと足を向けた。



病室へ入るなり「また来たの? バカなんじゃないの?」と言われるのにもそろそろ慣れて来ていた。




「よっぽど暇人なのか、それとも本当のバカなのか……」


彼女の綺麗な顔が、私を小馬鹿にする表情を作る。


「多分、両方です」


私はそう答えて、下校途中に洋菓子店で買ったゼリーを彼女──高峰 美雪(たかみね みゆき)に手渡した。


「プリンやシュークリームは太るって言うから、今日はゼリーにしました」

「……あなたって、ホントにバカなのね」


そう言いながらも、ゼリーを受け取る高峰さん。


「褒め言葉として受け取っておきます」


私がそう言うと彼女は本気で呆れた顔をした。



「ねえあなた。どうしてここに来るの?」

「……その質問、6回目です」

「……ふざけないで欲しいんだけど」

「別にふざけてませんけど……」


同じようなやり取りが、過去に何回もあったわけで。


そろそろやめませんか、この不毛なやり取りを。



私だって好きでここに来ているわけじゃない。


どうしても彼女にはあの動画を消して貰わなければいけない。


どうすれば彼女にあれを消去して貰えるか今は全く分からないけど、とりあえず彼女のことを知ることから始めようと思ったのだ。