先生がいてくれるなら②【完】


それを思い出し、「もしかしてお前が乾かしてくれんの?」と聞くと「ご所望なら」と素晴らしい返事が返って来て、俺は思わずあの時のようにしてもらおうとダイニングの椅子を脱衣所に運んできた。


腰をかけて「はい、よろしくお願いします」と言うと、なぜか立花はクスクスと笑っている。


……いや、笑ってないで、早く乾かして。


あの時と同じように、鏡越しに目が合う。


ほら、「早く早く」。



立花はちょっと笑いながら「熱かったら言って下さいね?」なんて、美容師みたいな口調で言ってて。



んー、……やっぱり良いねこれ。気持ちいい。



俺の髪の間を立花の華奢な指が滑る感覚、俺の地肌に時々立花の指先が触れる感覚……。


いやぁ、もう……、“至福の時” って、こう言う時のことを言うんだと思う。


はぁ、しあわせ──。



しかし、俺の髪が普通の男よりちょっと長めだとは言っても、所詮は短い。


あっという間に乾いてしまい、無情にも至福の時間はあっけなく終了してしまう。


あーあ、もう終わりか。


「乾きましたよー」なんて無邪気に笑いながら言う立花と鏡越しに目を合わせた。


ありがと立花。


お礼、しなきゃ、だよな?