先生がいてくれるなら②【完】


スウェットをギュッと握り込む私の手に先生の手が重なる。


そして、まるで駄々っ子に言い聞かせるような口調で「立花、大事なことだからよく聞いて……」と真剣な声で話し出した。



「俺はね、お前が高校生のうちは、キスより先のことをする気はないよ」


そう言われてハッと顔を上げると、先生の綺麗なブルーグレーの瞳が私を覗き込んでいた。


先生の瞳がゆらり、と一度揺らめく。



「だから、一緒には寝ない。……分かった?」



……先生の言いたいことは、分かる。


きっとそれは私を大切に思ってくれているからなんだって事も。


でも……そしたら、私のこの行き場の無い想いは、どうしたら……?


私だって、先生とキスより先のことを、……今すぐしたいってわけじゃ無い。


今すぐそうなるのはさすがに私だってちょっと怖いかもって、さっきも思ったし。


でも、だったら、“もっと先生と触れ合ってたい”、“もっとずっと側にいたい”って言う私のこの気持ちは、どうすれば良い?


そし正直にそう言ってしまったら、先生を困らせるだけなのかな……。



私は先生に返事をすることが出来ずに、自分の気持ちのやり場にも困って、俯くしか無かった。