スウェットをギュッと握り込む私の手に先生の手が重なる。
そして、まるで駄々っ子に言い聞かせるような口調で「立花、大事なことだからよく聞いて……」と真剣な声で話し出した。
「俺はね、お前が高校生のうちは、キスより先のことをする気はないよ」
そう言われてハッと顔を上げると、先生の綺麗なブルーグレーの瞳が私を覗き込んでいた。
先生の瞳がゆらり、と一度揺らめく。
「だから、一緒には寝ない。……分かった?」
……先生の言いたいことは、分かる。
きっとそれは私を大切に思ってくれているからなんだって事も。
でも……そしたら、私のこの行き場の無い想いは、どうしたら……?
私だって、先生とキスより先のことを、……今すぐしたいってわけじゃ無い。
今すぐそうなるのはさすがに私だってちょっと怖いかもって、さっきも思ったし。
でも、だったら、“もっと先生と触れ合ってたい”、“もっとずっと側にいたい”って言う私のこの気持ちは、どうすれば良い?
そし正直にそう言ってしまったら、先生を困らせるだけなのかな……。
私は先生に返事をすることが出来ずに、自分の気持ちのやり場にも困って、俯くしか無かった。



