先生がいてくれるなら②【完】




「──えっと、なんで先生が床なんですか?」



そう、先ほど覗き見してしまった、例の寝室の布団問題です。



「は? なんでって、当たり前だろ?」


『こいつバカなの?』──みたいな顔で首を傾げないで下さい!


違う、なんかさっきから色々、全部間違ってる。



「……百歩譲って別々の布団だとしても、普通は私がこっちですよね?」


と、私は床に敷かれた布団を指さして。


すると先生は私の顔を覗き込んで「……百歩譲って、別々……」と呟いた。



「……」

「……」



先生が私の言葉の何に引っかかったのか気づき、私は思わず赤面した。


「あ、あの、えっと……」


遠回しに『一緒に寝たい』って言ってるようなものだった……。



先生は私の頭に手をポンと乗せて「立花はベッド。俺は布団」と言って頭をポンポンと軽く叩いた。



どうしても納得いかない私は、先生が着ているパジャマ代わりのスウェットの上着をギュッと掴んで、上目遣いに睨んだ。


すると、先生の手が私の頭からスッと離れ、ついでに身体も半歩離れる。


私は先生の上着を掴んだまま、先生が離れた分の距離を詰めて元の距離に戻る。



「……離れろ」

「嫌です」

「……手を離せ」

「絶対嫌です」

「……」