先生がいてくれるなら②【完】


私はドライヤーを手に持ち、スイッチを入れる。


ブォーッと大きな音を立てて温風が先生の髪にかかり、柔らかい髪が風でふわりと舞う。


「熱かったら言って下さいね?」

「……んー」


先生が気持ちよさそうな顔してる……。


貴重。


髪の間に指を滑らせ、地肌をしっかりと乾かす。


「先生、熱くないですか? 大丈夫?」


気持ちよさそうに目を閉じてる先生を、私は鏡越しに覗き込む。


「んー、気持ちいい……」


ふふっ、先生、可愛い……。


私の指の間を、先生の髪が滑る。


サラリ、ふわり。



鏡を見ると、気持ちよさそうな、嬉しそうな先生の顔が見える。


でももう乾いちゃったんだよね、もうちょっと眺めてたかったなぁ。



「はい、先生、終わりました。乾きましたよー」


ドライヤーのスイッチをオフにして鏡越しに先生と目を合わせると、先生はふいっと振り向いて、指でクイクイっと私に顔を近づけるよう呼ぶ。


「……はい?」


私が先生の方に少し顔を近づけると……先生の腕が伸びてきてグイッと頭を引き寄せられ、そのまま唇が重なった。


それは、まるで、私が先生を襲ってるような体勢で、いつもより強く唇が押しつけられ……いや、私の体重が掛かってている分、私が先生に押しつけている格好になっていて……。



「ん、んん、……っ!!」



先生はリップ音をさせて離した自分の唇を、妖艶な表情でペロリと舐めた。



「髪の毛乾かしてくれたお礼」



鏡に映る自分の顔が、恥ずかしさで真っ赤に染まっていて……。


それがますます私の羞恥心を煽り、思わず床にペタリとへたり込んだ。



おかしい、色々おかしい。


お礼とか言いながら「ごちそうさま」なんて言ってるし、そ、それはお礼って言わない気がする──。