私はドライヤーを手に持ち、スイッチを入れる。
ブォーッと大きな音を立てて温風が先生の髪にかかり、柔らかい髪が風でふわりと舞う。
「熱かったら言って下さいね?」
「……んー」
先生が気持ちよさそうな顔してる……。
貴重。
髪の間に指を滑らせ、地肌をしっかりと乾かす。
「先生、熱くないですか? 大丈夫?」
気持ちよさそうに目を閉じてる先生を、私は鏡越しに覗き込む。
「んー、気持ちいい……」
ふふっ、先生、可愛い……。
私の指の間を、先生の髪が滑る。
サラリ、ふわり。
鏡を見ると、気持ちよさそうな、嬉しそうな先生の顔が見える。
でももう乾いちゃったんだよね、もうちょっと眺めてたかったなぁ。
「はい、先生、終わりました。乾きましたよー」
ドライヤーのスイッチをオフにして鏡越しに先生と目を合わせると、先生はふいっと振り向いて、指でクイクイっと私に顔を近づけるよう呼ぶ。
「……はい?」
私が先生の方に少し顔を近づけると……先生の腕が伸びてきてグイッと頭を引き寄せられ、そのまま唇が重なった。
それは、まるで、私が先生を襲ってるような体勢で、いつもより強く唇が押しつけられ……いや、私の体重が掛かってている分、私が先生に押しつけている格好になっていて……。
「ん、んん、……っ!!」
先生はリップ音をさせて離した自分の唇を、妖艶な表情でペロリと舐めた。
「髪の毛乾かしてくれたお礼」
鏡に映る自分の顔が、恥ずかしさで真っ赤に染まっていて……。
それがますます私の羞恥心を煽り、思わず床にペタリとへたり込んだ。
おかしい、色々おかしい。
お礼とか言いながら「ごちそうさま」なんて言ってるし、そ、それはお礼って言わない気がする──。



