先生がいてくれるなら②【完】



応接室の扉が開き──会食が行われる食堂へと案内された。



“食堂” とは思えぬほどの豪華な部屋に通されたあとすぐに、藤野教授と教授夫人(三兄弟のお母様)が入って来る。


私は激しく緊張しながら、自己紹介と、今日招いて貰ったことに対するお礼を述べた。



お母様はとても優しそうでふんわりとした雰囲気の方で、どことなく浮き世離れしているような感じがする。


先生と血は繋がっていないそうだけどお母様が孝哉先生へ向ける表情はとても優しくて、孝哉先生のことをとても愛していらっしゃるんだと言うことがよく分かる。



そんなご家族の様子を見て、私はとても不思議な気持ちになった。



──何だろう、この感じ。


藤野教授、教授夫人、孝哉先生、光貴先生、広夢さん。


5人と一度に会することによって生じる、この感覚……。


お母様と広夢さんには初めてお会いするからなのかな。


うーん、……。



しかしその直後に始まったナイフとフォークとの格闘に、私は完全にその “不思議な感じ” の存在をどこかへ放り投げてしまった事は言うまでも無い。