先生がいてくれるなら②【完】


孝哉先生はと言うと、もう興味無さげにため息をついてソファに身体を沈めている。


……あれ?


さっき驚いた顔してましたよね?


それなのにもう興味無さげとか、どんだけですか……。



でも。


ふと我に返って先生の表情を見ると──先生の気持ちが少しだけど、流れ込んで来た気がした。



先生は、きっと緊張してるんだ。


私を伴ってお父様と対峙する事に。


自分一人ならどうとでも出来るけれど、私が一緒だから──。


教授が私を呼んだ意図が全く読めないから──。



ここに来る前に先生は私に『緊張するだけ無駄』って言ったけど、もしかするとあれは自分に言い聞かせるための言葉でもあったのかも知れない、と思う。



私は先生の手の上に、私の手をそっと重ねた。


先生が怪訝そうな顔で私を見る。


ダメですよ、先生。


そんな顔したって、それが作り物の表情だって、私には分かっちゃいますからね?


私が先生の手をギュッと握ると、先生は小さくかぶりを振って、ため息をついた。