悠斗は1周目が終わる前に抜き返して、アンカーでバトンを待つ私の所にトップで戻ってきた。


「明莉っ、頼んだ!!」


悠斗の手から私の手へとバトンが渡る。


何度も確認して練習したバトンパス。


ほんの小さなミスも許されない──。



悠斗のパスは、完璧だった。



私はバトンを持って一心不乱に走り出す。


走っている時は、私には隣のレーンの事がほぼ見えない。


とにかくゴールへと自分の足を進めるだけ。


背中や足の痛みも、今だけは全く感じなかった。



──気持ちいい!!



風を受けて走る、この感じ。


自分のためにだけ走る。


あの白いテープに向かって、とにかく足を動かして、前へ、前へ。