先生が私の耳元でフッと小さく笑うのが分かった。
「どうかしましたか?」
私が尋ねると、「前に来た時の事、思い出したから」と言って、先生は私を抱き締めたまま頭をふわりと撫でた。
「前に来た時も、こうやってお前を抱き締めたな、って」
私は言葉無く、ただ、うんと頷く。
「まさか、もう一度お前とここに来られるとは思ってなかったから……嬉しい誤算だな」
私はギュッと抱きついていた腕の力を少し抜いて、先生を仰ぎ見る。
──嬉しい、誤算。
先生は私の額にかかる髪を横に払い、私の額にそっと唇を押し当てた。
「っ……!」
急に落とされた額へのキスに、私は驚いて目を瞬かせる。
額から伝わった先生の熱で、顔全体が熱くなっていく。
「あはは、顔、真っ赤」
先生が笑いながら私の両頬を手で包み込んだ。
「先生のバカっ」
先生の胸のあたりを右手でポカリと叩いて反撃。
「おでこにキスしたぐらいで赤くなってたら、この先どーすんだよ?」
私の顔を覗き込む先生の顔は、とても意地悪そうで、でもどこか妖艶で──。



