話すたび、笑うたびに先生の息が私の耳にかかって、私の耳や頬、首までもがどんどん熱を持つ。
「い、いじわる……」
それ以上何も言い返せなくて、私は上がる息を整えることも出来ない。
あの時と同じように、寄せては引く波の音がずっと聞こえていて──。
あの時と違うのは、今は私と先生の気持ちが通じ合っている恋人同士だと言うこと。
そう、あの時──
あの時、先生はいまと同じように、私を抱きしめてくれた。
私はその前から先生のことを想っていたけど、先生はどうだったのだろう?
もしも先生もあの時から私のことを想っていてくれたのだったら……私たちは少し遠回りをしたのかも知れない。
でも……。
もしあの時、私が先生に好きだという気持ちを告げていたら、先生はどう答えただろう?
先生が私を優しく抱きしめてくれている。
まだ背中の痣はぜんぜん治ってないから、痛くないように、本当に優しく。
先生の体温がとても心地良くて、先生の気遣いがとても嬉しくて。
先生の背にそっと腕を回して、私が、先生をギュッと抱き締める。



