先生がいてくれるなら②【完】


走る、と言っても、砂に足を取られてしまってあまり早く進めないので、あっけなく先生に捕まる。


「俺から逃げようなんて、百年早いから」


そう言って掴んだ腕を引いて、私を優しく抱き寄せた。


「先生が意地悪するからです」


私がそう言うと、先生は私をふわっと抱きしめて、「あれは、意地悪じゃなくて、“愛撫”って言うの」と私の耳元で囁く。


「っ、な、……っ!」


先生の発した言葉に狼狽えて、思わず呼吸すら忘れそうになった。



あ、あ、愛撫、って……!



だめ、高校生の私には、その言葉は難易度が高すぎる……!!


「……お前の耳、すごく熱い。なんでかな」


先生は私の耳に唇を寄せながら、クスクスと笑う。