夏に訪れた時とは少し違う、秋特有の澄んだ空から吹き下ろす爽やかな風が気持ちいい。
あの時と同じように、私と先生は手を繋ぐ。
でも、あの時とは違う。
あの時は、私の気持ちはまだ先生には届いていなかった。
あの時、先生がなぜ私をここに連れて来てくれたのか、全く分からなくて。
あの時は幸せの中に、とても高い濃度で不安が混じっていて。
だけど、いまは──。
私は隣を歩く先生を見上げると、先生も私に視線を合わせて微笑む。
先生の優しい笑顔が嬉しくて、私は繋いだ手にちょっとだけ力を込めた。
すると、先生の表情が……ちょっと悪い顔になって、案の定、繋いだ手をわざと少し緩めて、私の手の平を親指でスルリと撫でた。
「!!」
あの時と同じ事を、またやるんですか!?
先生の悪魔!!
私がそれ、くすぐったいって感じるの知ってて、やっちゃうんだ!?
私が先生を睨むと、先生は何も無かったような表情で「ん?」って笑ってる。
「もうっ、先生のバカ!」
そう言って私は先生の手を振りほどいて、砂浜を走った。



