だけど……彼女の怪我の事を思うと、抱き締めるなんて事は絶対に出来なかった。
これは神様が、俺が暴走してしまわないように仕組んだ事なんじゃないかと思ってしまう。
でも、やっぱりもっともっと近づきたくて、俺は彼女の首の後ろにそっと手を回して、出来る限り優しく抱き寄せた。
優しく頭を撫でると、立花は俺の肩に顔を埋める。
圧倒的な幸福感──。
何度かこうやって抱き締めたことはあるけど、想いが通じ合っての事じゃ無かったから。
だけど……。
俺は、はぁ、とため息をはき出す。
俺はこのあとまた学校で、立花の辛い経験をもう一度聞かなきゃいけない事を思い出してしまった。
耐えられるかな……、そう言葉にすると「じゃ、席外してて良いですよ」なんて平気で言うコイツが憎らしい。
そんなの無理に決まってんじゃん。
俺がふて腐れると、立花が「わがまま」と言って笑った。



