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「じゃぁ、橙子先生。戸締りお願いしますね。」

園長先生は、知り合いのお通夜だとかで…バタバタと足早に園を後にした。

「あ…はい、大丈夫です。あと1人なので。」

初の遅番。

しんとする廊下の奥に、長い息を吐き切る。

なんだろう…これが暗がりだったら少しは不安になったりするのだろうけれど、夏の陽は長い。

静かな廊下の先、日中の騒がしさから解き放たれて…オレンジ色の光にホッとする。

もうすぐ午後7時を指す時計。

目の前の男の子…煌君はせっせと紙飛行機を作ってはシューっと投げて追いかけて……

それを繰り返す。

普段…“ 先生っ!先生っ!”と呼ばない子。