「陸斗、子供は?」

「……いや。俺も嫁さんも子供が欲しくて結婚したのに、なかなか簡単じゃないんだな。」

「そっか……。そういうもんか。
でも、まだ結婚して3年だしね。(笑)」

私の日常ってば…子宝に恵まれてるけどね。

「おっ、そう言えば…橙子の保育園…あっ、でも違うか…確か2箇所あるんだったよな。
大きい方の保育園、来月から洗面所の工事に入るよ、俺。」

「えっ、そうなの?
今、その大き方の園に居るの…私。
事情あって…今週から。」

「マジでっ!じゃぁ、来月からちょくちょく会えるかもな。」

「うん!」

陸斗のこういう素直で人間好きな所…変わらない。
誰に対しても嬉しい言葉を掛けてくれて、いつでも前向き。

こういう人が…

“ 愛情の貯金を持ってる人”

って言うのかも。

定食屋の両親に陸斗の他に3人の兄弟。

陸斗の家族って賑やかだった記憶がある。


お金と数字……なんて言わない。


私はもう一度、古い観覧車を見つめる。

あと少しで沈む太陽。

陸斗と私は、夕陽が沈むのを見届けてからお互いに…またね…と手を振った。