「…………。」

園長の肩が震える。

腕から指先へ…震えるその肩が小さく感じる。

「私を悪魔だと思うでしょ。
それなら…彼ら…ホストたちも悪魔でしょ。
真面目な娘は、恋をしただけなのに…。」


何が正しくて…何が悪かったのか…

もし…このまま、黙って逃げて…一生、朝日を見られない。

この人は、そういう選択をするのだろうか。


「間違ってしまったら…謝らなくちゃ。
天使でも悪魔でもない…人間だから間違うことは沢山ある…

私からは何も言うつもりはありません。

けれど…いつか煌君に謝って下さい。

煌君ならきっと…許してくれるはずです。

だから、だから絶対…謝って下さいっ!」

彼女は私となつめ先生に背を向けて呟く。

「小さな…事です。」

その震える背中に涙が見える。

「お願いします。」

私は…そんな背中に頭を下げる。

「あのっ……私じゃダメですか?」

その声に…彼女は足を止める。

「私が、代わりに娘さんに手を合わせることを…許してくれますか?」

無言で立ち去る彼女を見送って…私はヘナヘナとその場にしゃがみ込んだ。