揉み合う3人。

ナイフの刃が…レイジ君の腕を掠める。

「わ…わ…わわわぁ…血っ!!血ーーーーっ!
うわぁーーーーーっ!!」

「レイジっ!!しっかりしろって!!抑えろっ。早くっ!」

私は助けを求めて、玄関を這い出る。

「誰かっ!誰か…助けてっ!!救急車、警察…早くっ!お願いっ…誰かーーーーっ!」

ハッと顔を上げたそこには…

見覚えのある顔。

耳元のスマホから救急隊員の声が飛び込んでくる。

「火事ですか?救急ですか?」

大きな吹き抜けを隔てた向こう側。

まりなちゃんとまりなちゃんの母親が買い物袋を下げて…唖然として立っていた。

「橙子…?先生……?」

耳元のスマホで救急隊員が繰り返す。

「火事ですか?救急ですか?」

私も動揺を、隠し切れない。

この劣悪な状況で…まさかクラスの子供に会ってしまうなんて、焦らない方がおかしい。

「速く…救急車。お願いします…。女性が倒れています。お願い…速く、一刻も早くっ!!」