堤防の古い街灯が、真夜中だというのに私の足元だけは守ってくれている。

夏の草の匂い……夜の香り。

夜風が吹き抜けて…私の髪は揺れるのに、微動だにしない観覧車の死に行く様が…やっぱり神秘的。

子供の…声?

きっと…数年前までは溢れていたんだろうな…子供の声で。

「………先生っ!」

子供の声?

「……とうこ…先生っ!」

こんな夜中に…煌君ぐらいしか…

いるわけ…ない。

「橙子先生っ!!」

私は振り返る。

「煌くんっ!!」

さっき走って来たヘルスロード、煌君が手を振ってこちらに走ってくる。

少し離れて…

光留が俯いて両手を膝につけて息を整える。

私は煌君を抱きしめる。

ぎゅっとすると…光留と同じ匂い。

「煌君………。」

こめかみに頬を寄せると、甘くて柔らかくて…泣きそうになる。