電話越し、光留が走っているのが分かる。

煌君のため。

私の…ため?

どっちだって…いいか。

安心した私はヘナヘナとマンションの入り口の植え込みに腰を下ろして光留を待つことにした。


5分。



10分。


「橙子先生っ!」

私を呼ぶ声にスマホからハッと顔を上げる。

あ……!!

「煌君っ!!よ…よかったぁ〜!!」

私は思わずレジ袋を足元に置いたまま、その場に立ち上がる。

煌君の隣の女性は…私を覗き込むようにして足を止める。

綺麗に整えられた茶色の前髪からは、大きな黒目…小さな顔の輪郭。

透明感のある厚い唇。

ミニスカートから伸びる細くて長い足。

綺麗な……子。

想像以上にエリさんは現役で、ママという肩書きは、少し勿体ないくらい綺麗な人だった。