「この前のさ……。」

「………?」

「 “ いってらっしゃい ” っていうの…嬉しかった。」

「私、その手には乗りませんから。早く、煌君をお布団で寝かせてあげて下さいっ。」

「橙子先生に…いってらっしゃいって言われた時、タトゥーの永遠より…愛情の貯金になった。」

家まで送れなくて…ごめん。

ヒカルはそう言うと眠っている煌君を抱きかかえた。

私のアパートとは反対側。

高級マンションの立ち並ぶ一角に向かって歩き出す。

「ヒカル君、おやすみなさい。」

ヒカルは振り返って…国宝級の笑顔を見せる。

「おやすみっ♡」

あっ……やっぱ、ヤバい。

そのおやすみ…ベッドで言われたら、全てを許してしまう。

きっと…。


このキュンの正体が恋ではない理由を探したい。

それなのに…

それなのに…見つからない。

 この前の…“ いってらっしゃい” って、嬉しかった。


 一度、信用出来なくなると止まらないんだ。



白夜の夜…ツンデレの孤独な天使を見つけた。

眠らない夜にあなたを今すぐ、保護したい?

これを恋というのなら…

私もアコと同様…相当病んでます。

普通の恋がしたいのに……

普通って……何?


私は、ヒカルと煌君の背中を見送って…大智に断りの連絡をしようと…

何故か…はっきりと心に決まった。