「この工場、外国人が多く働いていますよね。彼らを無理やり残業させていたって証言、取れてるんですよ。言うことを聞かなかったら解雇されたり暴力を振るわれるって話もね。防犯カメラにも映像が残ってました」

桜木刑事がそう言うと、智司の顔はだんだん青ざめていく。蘭が続けて言った。

「ミゲウさんは階段から落ちた際、背中を強く打っていました。しかし普通、階段を降りている最中に転落した場合、強く打っているのは腕や頭のはずなんです。これは階段を降りるミゲウさんを呼び止め、突き飛ばしたからではないですか?」

「外国人労働者をひどい扱いする業者はあったけど、ここまで酷いのは初めてだ。あんたはミゲウさんにマスコミに自分たちの置かれている環境のことを話すと言われたんだろ?今まで亡くなった従業員からも。それが世間にバレるとまずい、そう思って口封じに殺したんじゃないか?そして解剖されることを恐れてミゲウさんのご遺体を人を雇って奪おうとした」

桜木刑事の問いに智司は黙り込む。しかし、その目は泳いでおり、体はガタガタと震え、誰もが罪を認めているとわかるだろう。

「署にご同行、願えますよね?」

桜木刑事に連れられ、智司は歩いていく。その後ろ姿を蘭はただ見ていた。

リヴィアとベルナルドに死の真相を話した時、二人はさらに泣いていた。そして、気付かなかったことを後悔していた。

「知らない方が幸せだったんじゃないですか?」

圭介にそう訊ねられたが、蘭は首を横に振った。