「蘭さん、圭介さん、今日はお願いします」

リヴィアが頭を下げ、圭介が「こちらこそお願いします」と返す。リヴィアは目に涙を溜めながら棺の蓋を開ける。中には穏やかな顔をしたミゲウが永遠の眠りについていた。その頬にリヴィアはそっと触れ、また蓋を閉じる。

「ご遺体は研究所についてすぐに解剖します。死因は数時間後にはわかると思いますので」

蘭はそう言い、棺を車の中に乗せる。リヴィアもその隣に座り、「お願いします」と何度も頭を下げた。圭介が「それじゃあ出発しますね」と言い車を走らせる。

朝の八時半頃なのだが、山の中のためか車はちっとも走っていない。街からは遠く離れており、研究所のある辺りでは見られない緑が広がっている。

「綺麗ですよね」

圭介がそう言い、蘭も景色を見始めた刹那、脇道から急に黒い大きなワンボックス車が飛び出してきた。車は圭介の車の前に立ち止まり、圭介は慌ててブレーキを踏む。

「な、何だ！？」

パニックになる圭介に対し、蘭は冷静に目の前に立ち塞がる車を見つめていた。そしてシートベルトを外す。車からはサングラスで顔を目元を隠したスーツ姿の男性が何人も降りてきた。