はつ恋。

「有馬くん」

「ん?」

「メリーゴーランド、乗りたい」

「メリーゴーランド?」

「うん」


2日前、洋服を考えながら頭を雑巾を絞るみたいに絞って絞って絞りまくって答えを出した。

それが......メリーゴーランド。

私がたぶん3歳くらいの時、家族4人で遊園地に行ったんだよね。

その時に真っ先に乗ったのがメリーゴーランドだった。

1番カッコいい馬を自分で選んで、前に私、後ろにお母さんが付き添いで乗った。

父と兄は近くの馬車に乗り、ワーキャー騒ぐ私を見ていた。

ただ回るだけでスリルもないのだけれど、絵本で見た王子様が乗っていた馬に自分も乗れたことが嬉しくて、そして、なぜだか楽しくて何度も何度も乗ったんだ。

遊園地に来たのはその1度きりだったから忘れかけていたけれど、ようやく思い出した。

遊園地に今度行った時も絶対乗ろう。

その"今度"が13年後になるなんてその時は考えもしなかっただろうけれど、でもようやくその時は来た。

ここまで来たら乗るしかない。


「乗るか、メリーゴーランド」

「うん!」

「ほんと、とことん期待を裏切らないな、日奈子は」

「ふぇっ?」

「可愛すぎる。心配になるほど」

「そんなことないって!」

「ごちゃごちゃ言ってないで、行くぞ」


有馬くんに手を引かれ、私は歩き出した。

有馬くんが馬に乗ってやってくる私だけの王子様のように見えた。