はつ恋。

―――ゴンゴンゴン!


「ぎゃっ!何?!」

「キーケース忘れた。取ってくれ」


なんだ、お兄ちゃんか...。

って、スマホ!

私は急いでポケットにしまい直し、意地悪な兄にキーケースを取ってやった。

気づかなかった方が面白かったのになぁ。

入れなくしてやりたかった。

玄関のドアを開け、兄にキーケースを渡す。


「はい」

「サンキュ」


そう言ってぽんと頭に手を置く。

ずるいよ、お兄ちゃん。

許したくなっちゃうじゃん。

もぉ!

ぐちゃぐちゃになった感情をキレイさっぱり無くしたくて、私は洗濯を始めた。

前言撤回。

私も洗濯されたいかも。


さて、洗濯の前に今度こそメッセージを送っておこう。

私は震える人差し指でスマホをタップし、有馬くんとのトーク画面を開き、そこに自分の予定を打ち込んだ。

やたらと緊張してしまったけれど、これで大丈夫なのだろうか?

先行き不安だけど、頑張るしかない。

私の未来の幸せのために。


「送信っと」


ちゃんと届きますように。

そう祈ってまたポケットに戻した。