はつ恋。

「あのぉ...」

「ん?」

「最寄り駅ってどこですか?だってもうけっこう大きな駅過ぎてきちゃったし...」


私が言った直後、電車がガタンと大きく揺れた。


「わっ」


―――ドンッ!


私の顔の右隣に雷が落ちた。

目の前に広がるのは、彼の広い胸だった。


「あっ、あの...近いのですが...」

「静かに」

「はっ、はい...」


なんか命令されてる気が...。


「オレ、日奈子になんと言われようとちゃんと送り届けるまで着いてくから」

「いや、でも...」

「明日は休みなんだし、問題ないだろ。それより帰り道で日奈子が誰かに襲われる方が大問題だ」

「そ、そ、そうですか...」


ってことは、あと30分くらいはずっとこの態勢で行くんだね...。

連休前ってことで、激しく飲んだのか酔っぱらいのサラリーマンもちらほら見かけるし、確かに一緒に来てもらったほうが安心ではあるのだけれど...。

心臓持つかな...。

この態勢が続くようでは、心臓発作をおこしかねない。

早く安全地帯へ避難したい...。

なんてことを考えながら、なんとか耐え抜いたのだった。