はつ恋。

その翌日。

部室に現れたのは、私と木島くんだけだった。

先輩方は講習があって途中から目黒先輩が来ることになっているけど、それまでは2人だ。


「木島くん、ゴールデンウィーク明けに出す新聞を作らなきゃならないんだけど、見出し書いてもらってもいいかな?」

「うん、分かった」

「私は今月の花の欄に乗せる花を撮ってくるからそれまでよろしくね」

「は~い」


木島くんは菩薩のように穏やかで優しくて落ち着いている人だから、安心して話せるし、色々と任せられるんだよね。

私はカメラの入ったバッグを持っていつもの場所に行く前に保健室へと向かった。

4月の花は、言わずもがな桜を載せたのだけれど、5月の花はイマイチ良く分からないし、この学校の花壇にはそんなにたくさん種類が咲いているわけではないから、選ぶのが大変だった。

そして、ようやく選定したのが、カーネーションだった。

カーネーションをもらえっても不自然じゃないのは、恐らく母親になった人。

あっちゃんに聞いたら、養護教諭の春川好美先生のお子さんはまだ2歳でカーネーションを渡せないだろうからということで、私が代行で渡すことになった。

店員さんに不思議がられながらも、2週間ほど早くカーネーションを買い、今朝教室の花瓶に挿しておいた。

それをとってラッピングをし直し、春川先生に渡したところで写真を撮るという寸法。

上手くいくかどうかは私しだい。

頑張らなくては。

私は予定通りにラッピングまで終え、春川先生がいると思われる保健室に向かった。

今日はいますように...。

そう願いながらドアに手をかけた。