はつ恋。

「あたしの親さぁ、2人共教員で、お姉ちゃんも国立の教育学部に通ってんだよね。

すっごい厳しい家庭でさぁ、習い事とかもめっちゃさせられて。

全部成績が良くないと家で再テストやらされたり、見張られながら勉強したりしてさぁ。もうそんなの嫌になっちゃって。

で、グレて家出てきて、今はこの学校の近くの親戚のおばさんとこにお世話になってる。

中学までは友達と遊ぶ時間が取れなくて友達がどんどん離れていって1人になって、高校になってからは見た目こんなんだし、口調も荒いから誰も寄ってこなくてずっとぼっちやってたんだよねぇ。

でも、マジで良かった。日奈子に出会えて本当に良かったよ。

あぁ、もぉ、泣きそうだ...。助けて日奈子ぉ」

「あっちゃん...」


太陽の光を遮っていた右手の袖口がしっとりと滲んでいく。

私はあっちゃんの隣にティッシュを2枚引いて座った。

そして、あっちゃんの左手に自分の手を重ねた。


「日奈子...」

「私はあっちゃんの味方だよ。どんな環境で生きてきたってこれからどうなったって、私はあっちゃんの友達でいる。約束するよ」


あっちゃんはガバッと起きて私に抱きついて来た。

久しぶりに感じる温もりに、私はすごく温かい気持ちになり、鼻の奥がつんとして、目の奥がじわじわと熱を帯びてきた。


「ほんと、ありがと。ありがと、日奈子」

「うん...。こちらこそありがと、あっちゃん」



偶然によって訪れたのは、この出逢いだけではなかった。