私は中庭にやって来た。
ベンチが何個か置いてあり、真ん中には御神木のような桜の木が空に向かってそびえ立っている。
時刻は午後5時14分。
空はだんだんと濃い茜色に侵食されていく。
私はその木の根本まで近寄り、カメラを構えて空と木を撮った。
去年の夏休み中にパン工場でバイトをしていたのだけれど、その給料をほぼ全額はたいて自分専用の一眼レフカメラを買った。
そのカメラに収まりたいとでも言うように、桜の花びらがはらはらと舞い降りてくる。
私はご希望通りパシャリと収めた。
そして、カメラを下ろしてふと振り返った。
するとそこには......
男の子がいた。
いつもいるんだ。
この時間に
この場所に。
ベンチに腰かけて
足を放り投げるようにして
首を垂らし、
すやすやと心地よい寝息を立てている。
彼を見つけたのは、半年ほど前のこと。
このカメラで最初に撮る写真を決めかねてふらふらと放浪していると、ふと何かを感じた。
その何かに導かれるように足を動かして行くと、ここに辿り着いた。
真っ先に目についたのは、
あの大きな桜の木ではなく
彼だった。
今目の前に広がり始めた茜色と同じくらい、
いや、それ以上に美しい茜色の髪をした彼だった。
私は思わずカメラを構えた。
青いベンチに
赤髪の少年。
こんな構図、撮らない理由はない。
ベンチが何個か置いてあり、真ん中には御神木のような桜の木が空に向かってそびえ立っている。
時刻は午後5時14分。
空はだんだんと濃い茜色に侵食されていく。
私はその木の根本まで近寄り、カメラを構えて空と木を撮った。
去年の夏休み中にパン工場でバイトをしていたのだけれど、その給料をほぼ全額はたいて自分専用の一眼レフカメラを買った。
そのカメラに収まりたいとでも言うように、桜の花びらがはらはらと舞い降りてくる。
私はご希望通りパシャリと収めた。
そして、カメラを下ろしてふと振り返った。
するとそこには......
男の子がいた。
いつもいるんだ。
この時間に
この場所に。
ベンチに腰かけて
足を放り投げるようにして
首を垂らし、
すやすやと心地よい寝息を立てている。
彼を見つけたのは、半年ほど前のこと。
このカメラで最初に撮る写真を決めかねてふらふらと放浪していると、ふと何かを感じた。
その何かに導かれるように足を動かして行くと、ここに辿り着いた。
真っ先に目についたのは、
あの大きな桜の木ではなく
彼だった。
今目の前に広がり始めた茜色と同じくらい、
いや、それ以上に美しい茜色の髪をした彼だった。
私は思わずカメラを構えた。
青いベンチに
赤髪の少年。
こんな構図、撮らない理由はない。



