はつ恋。

「ごめん。もう1回見てくる!」

「いいよ。これがいい。ちょっとからかった。ごめん。スクバにでもつけとく」

「ほんとごめんね。私の趣味、確かに昔からズレてて皆から変だって言われるんだけど、何が変なのかぜんっぜん、分からなくて。でも、やっぱり変だって分かった。直すよ」


私がそう言うと、有馬くんは全力で首を振った。

そして、私をそっと抱きしめた。


「有馬くん...」

「日奈子は日奈子のままでいい。日奈子の全部がオレは大好きだから。出会った時からずっと......」

「うん、分かった」


時々、やっぱり有馬くんは不安そうな顔をする。

その時、私も不安になって顔を歪めてしまう。

それを阻止するために、有馬くんが私を抱き締めてくれるのだと思う。

お互いに初めてで、何もかも手探りな私達は、
きっとどんな人よりも、強くて弱くて脆い。

そんな矛盾した思いたちを受け止めながら、好きという気持ちに正直になって進んでいるのだろう。

正か負か分からずに、進んでいる。


「行くか」

「うん」


有馬くんが私をそっと離し、左手を差し出した。

私はにこっと微笑んでその手を取った。