『ねぇねぇ、知ってる?夏休み前になると出るっていう、うちの学校の神様の話。』
 そう言って俺に話しかけてきたのは、向かいの席の長濱 架乃|《ながはま かの》。いつも真面目で、娯楽なんて興味もない。ましてや、怪談話なんて縁遠いような彼女がそう話したのだ。
『さあ?聞いたことないな。』
淡白に返すと、頬をふくらませて面白くなさそうに言った。
『睦くんはそういうの私より興味無いよねー。でも、でもね?この噂、ホントらしいんだよ。』
わざわざ顔を近づけて耳元で囁く。
『長濱だってそうだろうが。ほんとに信じてんの?』
試すように、彼女の目を見ながら言う。