「少し休んだらどうだ? ゼミからぶっ通しだろ?」
「誰のせいでこんな状況になっていると思ってるの!」
紫音は眉を吊り上げ反論する。凰理の持っているカップはひとつだが、さすがに自分の分だけ淹れるほど冷たくも意地が悪いわけでもない。
紫音の分のコーヒーは来客用のテーブルの上に置いてある。
「まとまって整理する時間がなかったんだ」
悪びれもせずカップに口をつけて凰理は答えた。紫音はその場を動かず、本を確認して作業を進める。
「だったらさっきのゼミ生たちに手伝わせればよかったのに」
彼女たちなら喜んで凰理の手伝いをしただろう。先ほどの光景を思い出し、胸がわずかに痛む。講義の後、凰理と楽しそうにしていた学生たちもそうだ。
自分はあんな風にはなれない。
もしも私に前世の記憶がなかったら、彼女たちみたいに素直に彼を慕えたのかな?
「他人に私物を好き勝手触られるのは嫌なんだ」
ぶっきらぼうに凰理が言い放ち、紫音は目をぱちくりとさせる。なら自分はいいのか。前世で繋がりがあったから少なくとも彼女たちよりは他人ではないのか。
問い詰めたくなるのをぐっと堪える。どうしてか凰理の言い草に特別さを感じてしまったのも事実で、それはけっして嫌なものではなかった。
って、なにを考えているの。どうせ魔王は勇者である私をこうしてこき使って、面白がっているだけなのに。
「冷めないうちに飲んだらどうだ?」
凰理から動かない紫音に再度声がかかる。それを受け、さすがに休憩しようかと体勢を変え、立ち上がろうとした。
「誰のせいでこんな状況になっていると思ってるの!」
紫音は眉を吊り上げ反論する。凰理の持っているカップはひとつだが、さすがに自分の分だけ淹れるほど冷たくも意地が悪いわけでもない。
紫音の分のコーヒーは来客用のテーブルの上に置いてある。
「まとまって整理する時間がなかったんだ」
悪びれもせずカップに口をつけて凰理は答えた。紫音はその場を動かず、本を確認して作業を進める。
「だったらさっきのゼミ生たちに手伝わせればよかったのに」
彼女たちなら喜んで凰理の手伝いをしただろう。先ほどの光景を思い出し、胸がわずかに痛む。講義の後、凰理と楽しそうにしていた学生たちもそうだ。
自分はあんな風にはなれない。
もしも私に前世の記憶がなかったら、彼女たちみたいに素直に彼を慕えたのかな?
「他人に私物を好き勝手触られるのは嫌なんだ」
ぶっきらぼうに凰理が言い放ち、紫音は目をぱちくりとさせる。なら自分はいいのか。前世で繋がりがあったから少なくとも彼女たちよりは他人ではないのか。
問い詰めたくなるのをぐっと堪える。どうしてか凰理の言い草に特別さを感じてしまったのも事実で、それはけっして嫌なものではなかった。
って、なにを考えているの。どうせ魔王は勇者である私をこうしてこき使って、面白がっているだけなのに。
「冷めないうちに飲んだらどうだ?」
凰理から動かない紫音に再度声がかかる。それを受け、さすがに休憩しようかと体勢を変え、立ち上がろうとした。

